日本原住民論 -大正時代(『日本の人類学』)

日本における自然人類学の歴史について,個人的な覚え書きです.
ストーリーの構成や内容は [1] を参考にしています.
(よくまとまった読み応えのある本ですので,機会があればぜひご覧になってみてください.)
間違いや誤植などあるかもしれませんので,十分にご注意ください.

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鳥居龍蔵の固有日本人説
朝鮮半島を経て渡来してきた人々が,アイヌを追いやり,弥生土器の製作者となったとする説.弥生時代は狩猟採集の時代で,鉄の利用はなかったと想定していた.


浜田耕作の土器の系統論
縄文土器が最古,弥生土器と北海道続縄文の土器がその次に,そして祝部土器に変わっていくとした.前後関係はそのとおりだが,連続性を重視しすぎていた.先史人の系統もあわせて論じており,起源が同じ渡来集団と何度か混血しながら,同一の人々が時代により異なる土器をつくった(現代日本人の祖先が直接的に縄文時代までさかのぼる)と考えた.


■長谷部言人の自生説
日本人の構成を分解還元的に調べようと試みた.古典資料は参照するが,想像を交えて拡大解釈するのは避けた.
縄文時代の文化はゆるやかに拡大していったのに対し,弥生時代の文化は急速に拡大し退却しなかったことに目をつけ,弥生時代の大規模な渡来を疑った.
模索しながら議論を深めていったため,前期の議論は一貫性に欠けている.


■松本彦七郎の第三人種説
縄文時代弥生時代のあいだに連続性を認め,アイヌ・弥生と現代日本人のあいだに不明な第三の人々をおいた.

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参考
1 寺田和夫. 1981 (初版), 『日本の人類学』, 角川書店, 東京.